2022年 住宅ローン減税はどうなる?

2021年12月12日

住宅ローン減税

 

 

来年度の住宅ローン控除は、控除率をこれまでの年末借入残高の1%から0.7%に縮小することが今年の「税制改正大綱」で決定されました。

 

控除率が0.7%に縮小となりましたので、例えば、年末の借入残高が4000万円の場合、現行制度では1%=40万円だった控除額が、0.7%=28万円になります。

 

新聞・TV等ではこのマイナス部分だけを報道しているので、ニュースを聞いている消費者にとってはマイナスばかりを感じられるかもしれませんが、今回の改正のポイントを説明します。

 

 

 

住宅ローン減税

 

 

1. そもそもなぜ控除率縮小となったのか?

 

今回の住宅ローン控除の見直しの背景には、「逆ざや」と呼ばれる現象を緩和する目的があります。

 

現行の住宅ローン減税の控除率は、毎年の借入残高の1%で計算されます。しかし、今は住宅ローンの低金利競争が激しくなっており、変動金利型の金利相場は年0.5%前後と、住宅ローン控除の控除率1%を下回っています。

 

そのため、消費者にとっては、金融機関に支払う利息(+0.5%)よりも住宅ローン控除で戻ってくる税金(-1.0%)の方が多くなる。つまり「低金利で住宅ローンを借りると得をする」現象が起きていました。

 

現在の金融機関の低金利競争も、この住宅ローン控除のメリットを前面に押し出して顧客を獲得するために起こっています。しかし、低金利でローンを提供することは金融機関にとっても赤字ギリギリの経営になっているという問題があります。

 

住宅ローンを利用する人にとってはプラスですが、全体を見たときには財政の健全性が損なわれているという側面が、今回の改正案につながっています。

 

 

 

住宅ローン減税

 

 

2.  改正の主な内容

 

*  2021年度に終了予定であった本制度を4年間延長する

 

*  上乗せ措置については、住宅性能に応じた上乗せ措置を講ずる(長期優良住宅、ZEH水準、省エネ適合等)

 

*  控除率を1.0%→0.7%とする

 

*  所得要件を3000万円→2000万円とする

 

*  所得税から控除しきれない額を住民税から控除する率を7%→5%(最高9.75万円)とする

 

*  住宅取得資金贈与非課税枠の特例は、非課税限度額を見直した上で2年間延長する

 

 

3.  控除率1.0%→0.7%へ縮小で控除額に影響が出る人は?

 

「改正後に住宅を購入する人は、戻ってくる税金が少なくなって損をする?」と思う方もいると思います。

 

控除率1.0%が0.7%に減った場合、「最大控除額」は40万円から28万円に少なくなります(ローン残高の上限が4000万円の場合)が、「あくまで減るのは最大控除額である」のため、条件によってはメリットがある場合があります。

 

控除額は、その人が納めている「所得税」・「住民税」の金額で変わります。

 

改正後の0.7%控除の場合、4000万円の住宅ローンの借入残高があるとして、すべての人が残高の0.7%=28万円の控除を受けられるわけではありません。

 

その理由は、それぞれの人によって支払っている「所得税」と「住民税」の金額が違うからです。

 

住宅ローン控除は簡単に言えば、その人の「所得税」と「※住民税」の合計よりも大きい金額にはできません。年収が少ないほど「所得税」と「住民税」の合計も少なくなるので、最大控除額の28万円を使い切るのが難しいのです。

 

つまり、年収の高い方ほど大きな影響を受けることになります。

 

※正確には、「所得税」から控除しきれなかった金額は、「住民税」から控除することになっていますが、住宅ローン控除の控除可能額のうち、「所得税」から控除しきれなかった金額と「所得税」の課税所得金額の5%(上限9万7500円)のうちいずれか少ない方が「住民税」から控除される金額になります。

 

 

住宅ローン減税

 

 

4.  具体的なローン控除金額及び住民税控除の算出の仕方(改正前での試算)

 

まず、年末に勤務先からもらった源泉徴収票をご用意してください(上図のものです)。

 

この用紙の上部右側にある四角で囲ってある「源泉徴収税額」が住宅ローン控除の金額となります。この場合で言いますと81,200円が控除金額となります。

 

この金額が「所得税」で、当然ながら年収が多くなれば金額が上がります。

 

例えば、「借入金額の年末残高」が4000万円とすると、現行では住宅ローン控除の上限金額は40万円ですが、この方の場合は81,200円の控除しか受けることが出来ません。

 

では40万円との差額の318,800円はどうなるの?という事で、支払っている住民税のうち最大136,500円が控除されます。

 

この方の場合は81,200円と136,500円の合計217,700円が控除されることになります。

 

 

 

 

 

5.  上記のケースで、改正後の控除率0.7%、控除期間13年の場合(改正後での試算)

 

控除率が0.7%になると、控除の上限金額は28万円となります。

 

控除率の上限が下がったことは影響ありませんが、住民税の最大控除額が97,500円に下がりましたので、合計178,700円が控除されることになります。

 

制度改正前よりも年間39,000円(10年間で39万円)のマイナスですが、期間が13年になる事で減税期間が3年伸びますので、3年分の536,100円がプラスとなります。

 

この方の場合は制度変更がかえってプラスになりました。

(単純計算ですので実際は誤差が生じる場合があります)

 

納めている「所得税」と「住民税」の金額によって、制度が変わってマイナスの影響を受ける方(総じて年収の高い方)、逆にプラスになる方、ほとんど変わらない方がいらっしゃいます。

 

毎月住宅ローンを返済していきますので、年末借入残高は年とともに減少していきます。納める「所得税」や「住民税」も毎年変わっていくと思います。

 

住宅ローンは長期にわたる返済となりますので、事前に改正後の控除のシミュレーションを行うことが大事です。

 

 

 

 

6.  改正の適用開始時期について

 

「新税制の適用開始」は、注文住宅は2021年10月1日以降の契約

 

分譲・中古・増改築は、2021年12月1日以降の契約となります。

 

既に遡及適用開始されていることになります。

 

 

 

住宅ローン減税

 

 

7.  「すまい給付金」について

 

「すまい給付金」については延長要求が出されておらず、国交省としては要請があれば検討するとの事です。

 

昨年12月発表の「令和3年度税制改正大綱」では、今年度と同様「住宅ローン減税」の1年延長については記載がありますが、「すまい給付金」については延長の記載がありませんでした。

 

しかし、その後の閣議で「すまい給付金」の1年延長を要求する事が閣議決定されました。

 

私見ですが、「すまい給付金」は、今のところ廃止の予定ですが、上記の経緯を考慮すると「令和4年度税制改正大綱」発表後に閣議で検討される事項なので復活するかもしれません。

 

 

8.  住宅ローン控除制度が改正された場合、すでにローンを借りた人も対象になるのか?

 

今回決定した改正は、すでに住宅ローンを借りて住宅を購入した方には影響がないと考えられます。

 

住宅ローン控除は、これまでにも何度か改正されてきましたが、すでに借りている人にさかのぼって改正内容が適用されたケースは今までありません。

 

住宅ローン控除は、基本的にはローンを借りた時点の制度が最後まで続くと思われます。

 

 

 

 

 

今回は、2022年度税制改正大綱の中で、「住宅ローン控除」について説明しました。

 

文中でもお知らせしましたが、控除の金額は購入される方の「年収」と「納税額」に限らず、「家族構成」や「自己資金」等によっても変わってきます。

 

マイホームを購入する時期は、控除を上手く使う時期を選ぶことはもちろん大事ですが、ご家族のライフプランのタイミングも考慮しながら検討してください。

 

 

<参考HP>

自由民主党「令和4年度税制改正大綱」

財務省「税制改正の概要」

日本経済新聞「住宅ローン減税、控除率0.7%に下げ」

国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ」

BLUE HOUSU「2022年度住宅ローン減税はどうなる?」